ついでに批判

ペサック住宅群もついでに批判しておきました。
西洋美術館の失敗と、ペサック住宅群の失敗は、ある意味対照的で、比較するのもおもしろいかなと思ったからです。

ペサック住宅群はコルビジェの近代建築5大原則に乗っ取って設計されましたが、これを住民が受け入れることはありませんでした。横長連続窓は分断され、彼の理論による彩色は塗り替えられ、陸屋根は切り妻となり、まさに全否定的改築が成されてしまいます。1925年のことです。コルビジェの位置づけとして、ペサックは実験場でした。"住まう"という根源的な活動に、実験という人為が介入する余地が無かった、ということでしょう。住宅としては完全に失敗と言えると思います。何せ住んでさえくれなかったんですから（笑）これは現代建築にも通じるものがありますよね。
西洋美術館は、コルビジェの初案（1956年）ではホールや休息所などを持つ総合文化センターのようなものが提案されたのですが、日本側としては松方コレクションを所蔵する器が欲しかっただけなので、この案は却下され、美術館のみの利用となりました。また、竣工後にも来日を希望、1階ホール部分に写真壁画を提案したのですが、日本側にそのような想定は無く、従って予算が用意されることが無かった為、これも却下となりました。
また、地震大国日本に於いて、彼の5大原則のもっとも重要なファクターである"ピロティ"が十分に生かされることはありませんでした。どうにも浮遊感に欠ける、重々しい建築となっています。（積層ゴム免震構造を以てしても限界があったようです）

つまり平たく言えば、ペサック住宅群は「やりたい放題」やって拒絶、改造されてしまったのに対して、西洋美術館は「何一つ彼のやりたいことを成し遂げる」ことの無いまま竣工してしまったのです。そういう意味で、この二つは対照的な失敗作なんじゃないかと。
対外的に失敗作であるか、それとも対内的に（つまりコルビジェ自身的に）失敗作であるかという違いです。ここらへんをレポートに書きました。

余談ですが、西洋美術館のすぐ近くにある東京文化会館はコルビジェの初案の文化センターの一部を実現したものです。何か裏があるのでは…？？と思ったら、やっぱりそうです。設計は前川圀男。コルビジェに師事した日本人の一人（笑）日本を代表する建築家の一人ですね。

大体5000字ちょっとくらいになりました。一晩で書いたのでボリューム的には十分かな。成績狙うならもっと書いた方がいいかもしれないんだけど。ちょっと寝て、起きて、まだ余力があればもう一枚くらい書き足そう。